創造する心

マーヴィン・ミンスキーはマサチューセッツ工科大学(MIT)において、東芝寄付講座でメディア・アートと科学の教授、そして電気工学科でコンピューター・サイエンスの教授を務めた。彼の研究は、人工知能、認知科学、ニューラル・ネットワークの分野において理論と実践の両面で業績を築き上げ、さらにチューリング・マシンと再帰関数に関する理論を進展させた。他の分野、すなわちグラフィックス、記号的数式処理、知識表現、常識的意味論、機械知覚処理、そして記号的およびニューラル・ネットワークによる機械学習の分野にも貢献した。

ミンスキー教授はロボティクスとテレプレゼンス分野を切り拓いた。教授は機械式の腕や触覚器を持つ機械の手、そして最初期のLogoタートルを設計・開発した。これらの業績は、後に続くロボット工学研究に大きな影響を与えた。教授は先進的な宇宙探査技術の開発にも関与しており、スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』(原題『2001: A Space Odyssey』)の制作に技術指導として参加した。

1951年にミンスキーは、ランダムに接続されたニューラル・ネットワークに基づく学習機械を世界で初めて作成した。これはシナプス結合の強化というモデルに基づいており、SNARC(Stochastic Neural-Analog Reinforcement Computer)という名前が与えられた。1956年、ハーバード大学のジュニア・フェローだった時に、共焦点走査顕微鏡を発明した。これは、従来のものよりもはるかに高い解像度と画質を持つ光学顕微鏡であった。

1950年代中盤からミンスキーは、計算論的なアイデアを使って人間の心理的プロセスの特徴を記述するという研究、そして機械に知性を与えるという研究に邁進した。1970年代初頭には、シーモア・パパートとともに、「心の社会(Society of Mind)」と呼ばれる、児童発達心理学と人工知能研究による知見を組み合わせた理論を構築し始めた。心の社会では、知性は単一の機構から生まれるものではなく、広範な種類の思考エージェントの相互作用によるものだという理論を提案したのである。

1985年にミンスキーは大書『心の社会』を出版した。この本は270個に及ぶ思考に関するアイデアが1ページに1つずつ書かれた上、一つひとつのアイデアが他のアイデアと関連づけられるように記述されており、心の社会理論そのものの構造を反映した構成になっていた。2006年には続編『ミンスキー博士の脳の探検』が出版された。こちらの方は高次の心理的活動、つまり感覚・目標・感情や意識的思考をカバーする理論であり、複数の階層からなる思考プロセスを基本要素とし、それらがお互いに反応し合うというモデルに基づいていた。複数の「考え方」を提供することにより、人間固有の「思考の豊かさ」をプロセスの集まりとして説明できるものであった。

技術的な業績に加えて、マーヴィンは古典楽曲のピアニストとしても名をなした。彼はバッハやベートーベンのスタイルで即興演奏する技術を独習し、2016年1月24日に亡くなるまで演奏を欠かさなかったのである。